愚者

身軽になった時に見えてくる目指すべき道

【愚者】は家も仕事も持たない放浪者です。私たちは彼のことを愚か者と呼んでいます。しかし彼は本当に愚かなのでしょうか。何にも縛られずに、誰の言うことも気にせずに、自分の思うままに自由奔放に生きる姿はとても楽しそうです。私たちは少なからずこの愚者に嫉妬をしているのではないでしょうか。【愚者】のような生き方をしたい、あなたはそう思うことはありませんか。

しかし自由気ままで自分勝手な感じの【愚者】ですが、考えることを最初から放棄したわけではありません。考えて考えて考えて行き着いたところが【愚者】なのです。なぜなら私たちは本当に悩んで悩んで悩んで、たどり着いたところが占いだからです。

【愚者】は様々なあるべき姿(それは秩序を保つために、本能とかけ離れたところで作り上げられているもの)に縛られている私たちに、本当の姿、本当の幸せ、本当の目的を改めて教えてくれます。人生は一度きりなのですから。

ウエイトの本では【愚者】は【審判】と【世界】の間に配置されています。
伝統的なマルセイユ版では番号が付けられていません。

絵の解説

白い薔薇と小さな袋を持った若者が崖っぷちを陽気に左に進んでいます。

あなたは棒に吊した小さな袋の中身だけで旅立ちました。
今まで持っていた何もかもは、これからの旅に必要ないと判断したのです。
荷物が軽ければ身軽にどこへでも行けます。
身なりはちょっと貧しそうに見えますが、白い薔薇を大切に持っています。
あなたは情熱ではなく、無邪気な心で進もうとしているのです。

しかし、楽しそうに進むのなら右に向かっていなければなりません。
でも、あなたは左に向かっています。
あなたは本来の自分、人間の本能、本当の自分のスタート地点に戻ろうとしているのです。

この先は崖になっています。
それに気づいた犬は注意を促していますが、あなたは気づいていません。
あなたにとって周りからの声は雑音にもならず、足取りを軽くするためのBGMにしかならないようです。

あなたはきっとこの崖から飛び降りてしまうでしょう。
その後、夢から目が覚めて現実に引き戻されてしまうのか、羽根が生えて遠くへ飛び、本当の自分のスタート地点にたどり着くことができるのか、それはあなたがどれだけ【愚者】になりきれているかで決まります。

今日は今までにないほど空が輝いている、とっても天気の良い記念の日です。
あなたの、本当の自分のスタート地点に向かいましょう。

正位置 : 誰のためでもない、一度きりの人生です

心底から本能に従うことです。周りの声に惑わされずに自分の心の欲求に従いましょう。
思い切って何もかも捨てましょう。身軽になって自分の人生を楽しみましょう。
誰のためでもない、自分のための一度だけの人生です。
本当の自分のスタート地点に立ちましょう。

逆位置 : 考えることを放棄しているか、頭でっかちになっています

思い切れていません。どこかで躊躇しているか、心残りがあります。
思い切り跳ばなくてはいけないのにそれができません。
考えることを放棄しているか、何も考えていません。考え無しの思いつきの行動は単なる逃げでしかありません。
自分勝手に一人でどこかに行ってしまっています。
跳ばなければならない時に頭でっかちになっています。